夏休み、石綿除去 東京23区では12校で作業

 校舎などにアスベスト石綿)が残っていることがわかり、この夏休み中に除去しようと、各地の学校が慌ただしく準備を進めている。87年、文部省(当時)が全国の学校現場での使用状況を調査したが、その後、自治体の独自の調べで「調査漏れ」が相次いで見つかった。現場では「学校のアスベスト問題は終わっていない」との声が高まっている。

 東京都世田谷区の希望丘中学校。体育館の天井の一部に、防火材としてアスベストを含む岩綿が吹き付けられていることが今年2月にわかった。ほかの公共施設で天井の一部が崩れ、アスベストの使用が判明。区が学校についても再調査してわかった。夏休み中に専門業者が除去する。

 通常の状態であれば問題はないが、万一、はがれた場合などに飛散する可能性があるという。区教委が先ごろ開いた保護者向け説明会では「作業により新たな危険が生じないか」と不安がる声も上がった。

◇体育館使えず

 体育館は除去作業のため、夏休み中は使えなくなる。バスケットボール部などは練習場所の確保に追われている。同区内では小学校1校も夏休み中に除去をする。ほかにアスベスト使用がわかった4校についても1年以内に除去する方向だ。

 北区では夏休み中に、小中学校計8校で教室や職員室の天井に吹き付けられたアスベストの除去が予定されている。早いところでは21日から作業の準備が始まる。

 同区の王子第五小学校では終業式前日の19日に、保護者向けの説明文書を配布した。作業を前に、机や備品を運び出す作業も待ち構える。同校は「配った文書を見て不安に思う保護者から問い合わせがあるだろうが、安全性を十分に説明したい」と話す。

 東京23区では、大田、文京も合わせて計4区で12小中学校と児童館1カ所が夏休み中に除去作業を予定している。さいたま市教委によると、市内の小中計4校で夏休み中に除去作業をする。千葉県では船橋市袖ケ浦市の各1校で予定。神奈川県教委は県立学校43校でアスベストの飛散調査を実施する。

 文部省が87年に行った調査は、76年以前に建てられた公立の小・中・高校と特殊学校の教室などを対象に、天井の「吹き付け石綿」の有無を調べた。全国の1337校で使われているとされた。

 だが、その後、独自に再調査した自治体では、新たに使用が見つかる例が相次いでいる。当時は調査対象外だった製品を調べたり、建物の建設時期の幅を広げたりした結果で、ある区の担当者は「87年調査は、不完全だったと言わざるを得ない」と話す。

◇国の調査必要

 「中皮腫じん肺アスベストセンター」の名取雄司所長は、87年調査の際には、実際の施工例が多いアスベストを含む岩綿や、屋根裏への吹き付けなどが対象外だった点を指摘する。その上で「自治体ごとの再調査は基準がばらばら。国が調査し直すべきだ」と強調する。

 文部科学省はこのほど、再調査に乗り出す方針を示したが、具体的な手法は明らかにされていない。ある区教委の担当者は「アスベスト製品は膨大な種類があり、再調査といっても、学校の隅々まで完全除去を目指すなら手間や費用は想像もつかない。実効性ある再調査ができるだろうか」と懸念している。

2005/07/20(水) 16:50:22

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2005年07月20日20時31分