石綿使用の公共施設、対策不明50カ所 「書類なし」も

 アスベスト石綿)の使用が過去の調査で確認された全国の1700余の公共施設のうち、どのような対策が取られたのか分からない施設が兵庫、佐賀、沖縄の3県で計約50施設あり、「当面危険がない」として放置してきたのも全国で約60施設に上ることが、47都道府県と14政令指定市を対象にした朝日新聞の調査でわかった。当時の調査書類の所在がわからず公共施設での使用実態が把握できていない自治体も11県2市あった。

 再調査を検討または決定、既に行っているのは52の自治体に上り、改めて実態を把握しようとする動きも全国に広がっている。

 各自治体の環境や営繕分野の担当者から、それぞれが管理する庁舎、集会施設、図書館などの公共施設について聞いた。87年に文部省(当時)が一斉調査した学校は含まれていない。

 その結果、少なくとも25道府県11市の計1743施設でアスベストが使われていた。東京都は使用面積が約23万平方メートルとしているが、施設数は集約していない。

 このうち、兵庫県は87年ごろ、公共施設でのアスベストの使用状況を調査し、66施設での使用が判明した。表面がはがれ落ちやすくなっているなど早急な対応が必要と判断された約半数については対策が取られたが、残りは対策が取られたかどうか確認できていないという。

 佐賀県では91年の調査で、112施設での使用が判明。うち約20施設は対策の計画が立てられたかどうかも分からず、現状は不明という。沖縄県は88年に調査し、5施設で使用を確認。うち水産試験場と家畜衛生試験場の2カ所はどのような対策を取ったかの記録がないという。

 宮城、静岡、愛知の3県と仙台、千葉、静岡、神戸の4市は、計約60施設について、危険がないとの判断から放置していた。ほとんどが機械室やボイラー室などで「人があまり利用しない」(愛知県大気環境課)との理由が目立つ。

 ただ、ここにきて改善を図る動きもある。仙台市では最近になって機械室だった部屋が清掃員の控室に使われていることが分かり、物置に変える準備が進んでいる。

 一方、青森、福岡など11県と広島、福岡両市は調査書類がないため、実態が分からないとしている。ほとんどは、職員の記憶などから87年ごろに調査があったとしているが、書類がないため調査対象施設、アスベストの使用が判明した施設、どのような対策が取られたのかなどがわからないという。「当時は重大性の認識がなく廃棄した可能性が高いが、永久保存しておくべきだった」(福岡市技術計画課)との声も出ている。

 国土交通省建築指導課は「管理責任のある施設については自治体の責任で実態を把握してほしい」としている。

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< アスベスト被害 >
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2005年07月21日21時19分 asahi.com